聖家族 1

「プロローグ」

  さて。
  戯れに『聖家族』について思い出せるままに綴ってまいりたいと思います。
  まずタイトルですが。

  安易ですね〜(笑)
  なんでこの話を書こうとしていたのか、今となっては忘れてしまいました。
  原型自体は、高校生の頃から持ってたんですけどね。
  でもそれは、天涯孤独となった少年が早朝のバス事故に遭い、
  なぜか女装して学校に通うハメになるという
  ドタバタコメディだった……はず。
  そう、この話、元々はコメディなんです。
  じゃなきゃありえないっつーの、こんな設定(笑)

  それがなぜかこんなにシリアスで「果たして救いはあるのか?」
  な話になってしまいました。
  まぁそうなってしまった理由は大いに朔の精神状態と関係あったんでしょうけどね。
  あの時期は来る卒業と就職と卒論・卒論・卒論卒論!!で完全に参ってましたから!
  この作品は、溜まりに溜まったフラストレーションを発散するべく生まれた物語です(笑)
  アキラがしょっちゅう泣くのも、朔のストレスを象徴しているようで
  今となっては苦笑モノですな〜(*_*;)
  
  タイトルが『聖家族』となったのは、
  元々アキラと宮坂を中心にした学園ドラマになるはずが、
  予定外に鳴瀬パパが動いたので、初の試みとしてホームドラマもいいかなぁ…
  と思ったからです(ホームドラマ?)。
  因みに書き進めていくうちに、家族とは
 「鳴瀬パパ、昌子、アキラ」と「宮坂(父)、アキラ(子)、咲枝(母)」
  の2つの意味を含んでいることに気付きました。
  まぁ安易なタイトルではありますが、これはこれで的を得ていていいのではないかと(笑)

  プロローグ冒頭では、最初からある程度結末を考えていたので
  それを匂わせる感じにしました。
  最後までアキラを苦しめた高見里の言葉も、登場しています。


■第1幕 4月の頃 【 家族再生 】

  西岡医師と小林女史は、この物語の中で一番の常識人ですね。
  どちらも本気で鳴瀬パパを心配して見守っているところも同じ。

  アキラと同じ事故で命を落とした愛娘の面影を探すように
  毎日アキラの見舞いに来る鳴瀬。
  西岡はそんな鳴瀬を本気で危惧しています。
  それは鳴瀬が極度の「家族依存症」であることを知っているからで、
  鳴瀬がアキラに異常な関心を寄せることを警戒していたからです。

  そして案の定、鳴瀬は目覚めたアキラを「お持ち帰り」してしまうわけですが。
  アキラの態度が慇懃無礼なのは、鳴瀬たちにまだ心を開いていないからです。
  この時点ではアキラ君、隙を見てまたどこかへトンズラしようとか思ってます(笑)
  とにかく誰にも関わらず自分の力だけで生きていこう!
  とか悲愴な決意をしているわけです。

  ですが鳴瀬から「家族」の提案を聞き、
  アキラはまるで愛人契約を結ぶようにその申し出を承諾します。
  ノーリスクな好意をただ受けるのではなく、
  こちらからも何か差し出す代わりの対価としての好意(金銭援助)なら受けられる。
 「晶の身代わり」となることをアキラはその好意の代償と考えています。
 「家族ごっこ」というアキラの言葉にその辺のニュアンスを出したつもりなのですが。
  アキラが鳴瀬を呼ぶ「お父さん」に《 》が付いているのは、
  ごっこ内の役割としてそう呼びかけているからです。
  いつからこの《 》が消えたか、みなさん気付いてましたか?(笑)