『天満月の夢』・9

 ところで、実際に校正作業に入ってからですが。

 何度か担当の編集さんとメールや原稿をやりとりしての作業でした。
「共同出版」という形態なので、校正作業も出版社だけに任せるのではなく、
 著者(朔)の責任の下、行なわれるというカタチです。
 では、「共同」でない普通の出版ならどうなんだろ?
 と思いますが、どうなんでしょうね?(笑)
 大体原稿が送られてきてから朔が校正をチェックするのに、
 1〜2週間くらいの期間がありました。

 これ、結構キツイんです(笑)
 同じ話を何度も繰り返して読む、って作業。

 誤字脱字や文法の誤りのチェックですから、
 物語だけを追っていてはいけないし、
 自分の書いた話だから内容は解りきってるのに、
 何度も何度も読まなければならない……

 イヤになってきますよ?
 そのうち、目が字を上滑りに追っていくだけになるんです。

 でも、この作業を嫌がっていては、
 出版社で編集の仕事はできないんだろうなぁって思いました。

 仕事としてこの作業をするとき、
 例えば全然興味のないジャンルに配属されれば、
 それはもう地獄としか言いようのない作業だろうなぁ……

 例えば朔が、ハーレクイーン?ハーレークイーン?
 よくわかりませんが、大人の人が読むような恋愛小説の部門に回されたら…
 一年と持たずに辞めてしまうかもしれません。

 どんな仕事にも、嫌な面ってあるのだなぁと。
 楽しいだけが仕事じゃない、そう実感しました。
 それを我慢してやるのが、社会人の務めだとも思いますけど。
 学生と社会人の最大の違いって、たぶんそこですよね。
 お金を貰って働いているのだから、イヤなこともしなきゃなんない。
 学生なら、バイト替えれば済む話ですから。

 話が逸れました。
 表紙のイラストですが、日記や掲示板に書いてある通り、
 数ある候補の中から朔が是非書いて欲しい♪ と思った方に描いて頂きました。
 ウズ(酒井千恵)さんとおっしゃる方です。
 ウズさんに決まってから、3つのサンプルを頂きまして。
 その1つ目が、今回の表紙です(*^-^*)
 2つ目はふたりが《光の涙》を手にする場面、
 3つ目には、《ハルシオン祭》の広場で噴水に腰掛け、月を見上げている場面です。

 どれもステキで、表紙をどれにするかすごく悩みました(笑)
 2つ目のイラストではムーンの耳がちらっと見えていて、とても可愛らしいのです。
 3つ目には「私の好きなシーンなので描いてしまったのですが」
 とウズさんがコメントして下さり、狂喜乱舞したのは言うまでもありません(笑)

 ちなみに、本を裏返すと、そこにもイラストがあります。
 ブリキのロボット、ランタン、《ドロップ・ドロップ》です。

 可愛い……o(*>_<*)o

 友達の意見も参考にしつつ、「1でお願いします」と連絡をすると、
 しばらくして、実際に表紙になった時のカバーサンプルが2点送られてきました。
 今度は、どんなデザインにするか、を決めるためです。
 題名をどんな字体、どんなバランスで配置するか、とかそんなのです。

 その時……実は、満月が今のように黄色ではありませんでした……
 そこで朔は、無理を言って月を黄色くしてもらいました(^-^;)
 星は黄色いのに、どうして満月が青白いんだろう? なんだか淋しそうに見えないかな?
 と思って、できれば……という感じでお願いしてみると、
 担当の編集者の方から、もう出来上がってるから無理だと思いますが頑張ってみます
 という感じのお返事を頂きました。

 その時になってはじめて、
 ああっ、本職のイラストレーターさんがこれでいいと思って描いて下さったのに
 何と言うコトを!! 編集者さんも、無理言ってスイマセン!!(>_<)
 と青くなったのでした……。

 それで、そのまま諦めて…というかその件は忘れていたのですが(笑)、
 実際に本が完成して送られてきたのを見れば…
 なんと、月が朔の希望とおり黄色になっているではありませんか!!

 急いで連絡してみると、出来上がったイラスト自体は加工できなかったので、
 装丁の段階で処理を施した、とのこと。
 もう、本当にありがとうございます、という感じでした。
 頭が下がりっぱなしです、本当に。

 帯の文句も、(たぶん)編集者の方が考えてくれました。
 なのに朔はそれにも訂正を入れ(不遜なヤツです)、
 表の文は朔が考えたものになっています。
 どうしても、タイトルの意味する掛詞を理解して欲しかったので。
 でも、裏の文は違うんですよ。
 この文のおかげで、作品の雰囲気がよく伝わっていると思います(^-^)
 編集者さんは偉大です。


以上このような運びで、めでたく出版を迎えることができました。
後悔はしていません。

さて、次回で『天満月の夢』の裏話も最終回です。

2006/2/13  14:04