《テト》U 6

文化祭(1)

    * 睡眠 *

 画像は、ヴェニス。サン・マルコ宮殿の横です。

 シオの視点で進む物語です。
 学園生活の一大イベントと言えば、修学旅行…かもしれませんが、朔的には文化祭もはずせません。
 体育祭は…本番は良くても練習やら予行演習が面倒で。という性質でした。
 だから、今回の舞台は体育祭ではなく文化祭。
 体育祭は、天印市のシリーズの方で書きたいと思っています。

 ちなみに、「一年生がクラス展示、二年生が演劇、三年生がバザー」というのは、朔の通った高校とほぼ同じです。
 しかし二年生に関しては、朔は特別クラスだったので強制的に展示物をやらされ、他のクラスが何をしていたのか記憶がありませんでした。
 なので、あったらいいな〜ということで演劇にしてみました。
 学校によっては、三年生は自主参加というところもあるみたいですね。
 でもシオたちの通う学校は一応エスカレーター式なので、三年生も参加です。
 朔の高校は普通の公立だったけれど、三年生も強制参加でした。
 部活でも参加しましたよ〜。

 文化祭は、シオとタキの評議委員コンビが取りかかる初の大仕事、という設定です。
 物語開始の時点ですでに文化祭本番約1週間前、かなり2人とも疲れています。
 この学校は生徒にかなりの自由を許している分、生徒の負担も大きいというわけです。
 何だかんだ言いながら頑張るタキと、実は結構ウラ手段を知っているシオという構図が書きたかっただけ。とも言います。

  「おっ、すっげぇ! さっすがシオだな。
   しっかし、学校側もよく許可したな〜」
  「学校へ提出する企画案なんて、書類上のことだから何とでも書けるしね。
   先生方も特に不審そうにはしてなかったよ。
   自慢じゃないけど、得意なんだ。昔からそういうの」

 この部分。
 やっぱり分かりづらかったでしょうか。

 ここでは明らかにしていませんが、2人が話しているのは、後夜祭で花火を使用するための依頼状についてです。
 花火師に依頼状を出すために、学校の許可印付の書状を入手した場面。
 タキが「学校側もよく許可したな〜」というのは、花火の使用を認められたことに対する感想で、
 続くシオの台詞は、体裁を整えて大人を煙に巻く術ならお手のもの、これくらいの書式なら朝飯前さ、という意味です(笑)
 自慢じゃありませんが、朔も結構得意ですね〜、そういうの。
 口からでまかせが上手いと言いますか。

 シオの優等生仮面の裏側がほの見えた瞬間でした。

 そして、この回のテーマ「睡眠」。
 シオは人前で眠るのが好きではありません。
 理由は作中にある通り。
 実はこれ、まんま朔と同じです。
 最近になってようやく人前でも(居眠りではなく)寝ようと思って眠ることができるようになりましたが、高校生までは授業中の居眠りすら皆無でした。

 シオは常に仮面を被っているが故に、人前で気を抜くことができません。
 無防備な自分の姿を晒すことにひどく抵抗感を抱いています。
 臨海学校とか、宿泊学習にすら抵抗を感じます。
 そんなシオが、

  だけどたぶん、タキなら……

 この「……」の後には何が続くのでしょう?

 「タキなら、平気なんだろうな。いつでもどこでも眠れるんだろうな」?
 それとも、
 「タキなら、大丈夫かな。一緒に寝ても」?

 続く言葉は敢えて書きませんでした。
 皆さんのご想像にお任せします。


  * 食事 *

 バザーに出す品物の鑑定を依頼に、シオとタキはカッサのタバッキを訪れます。
 そこで、一緒にお昼ご飯を食べようということになり……

 睡眠に引き続き、シオの苦手なもの第二弾です。
 これまた、モデルは朔自身です。
 普段の生活ではおくびにも出しませんが、苦手なのです。
 理由もまったく同じ。
 
 それにしても、タキの前でこうも素直に苦手だということを態度で示しているということだけでも、シオがタキに心を許しているという十分な証拠になるのではないでしょうか。
 どうでもいい人の前なら、シオは仮面を被ったまま我慢したでしょうから。

 普段食堂を避けるのは、余計な気疲れをしたくないから。
 でもここで躊躇したのは……

 気が引けるのは、その相手に同じだけの好意を返して欲しいと思うから。
 万が一にも、嫌われたくないから。
 そう思うと、本当に緊張してしまうから。
 何を話題にすればいいのか、分からなくなるから。

 そういう感じです。
 シオは、好意を持つ人物に近づくことを怖がっている、とも言えます。
 好きな人には嫌われていなければそれでいい、というタイプかもしれません。

 しかし以前ディーハに向かって「ぼくは自分の欲しいものを、どんな手を使っても手に入れるよ」と言うなど、シオの中ではまだまだアンビバレントな感情が対立する青春真っ只中という感じでしょうか(笑)

 タキはそうと気付いていませんが、シオは自分の弱点をタキに晒すことで、自分の心の仮面が少しずつ剥がれていっていると感じています。
 そしてそれと同時に、ますますタキについて知りたく思うのでした。


  * 笑顔 *

 このお話は、若かりし頃の朔への追悼の意(笑)を込めて書きましたです、ハイ。
 じゃあ副題はセルヴィエも言っている通り、「若いっていいね〜」で(笑)

 シオの背後から飛びついてくるタキですが。
 普段の彼の性格を考えれば、これはもう「コワレている」としか言い様がありません。
 実際、シオの言うようにすでにみんな頭がおかしくなってます(笑)
 でもそうやってエネルギーを爆発させることができるのが若さかな〜、とも思うのでした。

 そして最後に、「睡眠」に登場した依頼状の正体が明かされます。


  * 後日談 *

 このお話の見所は、冒頭です!
 もうそれしかありません。
 というわけで、タキの初恋の相手は……でした(笑)
 ものっすごいオネーサン好きだったんですね〜。

 そしてラスト、やっと文化祭が終わったとリラックスモードのタキに、シオは次なる試練を突き付けるのでした(笑)
 

2006/8/9  21:25